旦那のTESE手術の日。


最初は「付き添いなんて要らん」と言い張っていた旦那ですが、一応身体にメスを入れるんだから予後は大事にしなきゃいかんよと、半ば無理やり(?)仕事を休んで付き添いました。
とはいえ、旦那が診察室(の奥の手術室)に消えていくのを見送った後は、特にすることなんてありません。
嫁のあたくしは、待っている時間に銀行へ行ったり、カフェでお茶してみたり、まあそんなことをして適当に時間を潰しておりました。


手術室に入った旦那は、局所麻酔を打たれた上で、陰嚢(いわゆるたまたま)にメスを入れられるわけです。


『陰嚢に2−3cmの切開を加え、そこから精巣を取り出し、精巣を包む白膜を切開して顕微鏡で精子が存在しそうなところを少量切除します。切除した精巣組織をすり潰して顕微鏡で観察し、精子が確認されれば、精子の調整を行い、凍結・保存します。』


というのが手術手順です。
旦那によれば、術中は麻酔が効いているとはいえ、刃物でたまたまをカリカリ引っかかれるのもわかるし、術後に縫合する際には、薄い皮膚を糸がビーーーっと通り抜ける感触も生々しく感じられるとのことです。
手術は2時間前後で終わりますが、我が家の場合は事前に「9割がた成功するでしょう」と言われていた通り、辻先生が満面の笑みで「精子いっぱい取れましたよ♪」と言いつつ、待合室に出てきてくださいました。
7箇所切除して、6箇所から精子が取れましたとのこと。旦那の精子は6本のストロー様の容器に入れられて、液体窒素で凍結処理されました。


ただしここで重要なのは。
精子は間違いなく取れましたが、その精子の質までは保証されない、ということです。
たくさん取れたと言っても、正常で健康で活きの良い良好な精子がいるかどうかは別問題です。後日ファティリティクリニックの培養士さんに伺った話ですが、やはり精巣精子の場合は正常な精子が少なく、精子の一部に奇形があったり、運動量が少なかったり、何かしら瑕疵(という言い方は適当ではないかもしれませんが)のある精子が多い、とのことです。
顕微授精の際にはその中から良い精子を探して選んで受精させることになりますが、1本目のストローでいい精子が見つからなければ2本目3本目と解凍して探すことになります。
この「良質な精子を探す」という作業が大変手間隙かかるため、TESE精子の顕微授精はやらなくなったと池袋の江崎先生は仰っていました。
つまり、ここで精子がたくさん取れたからと言って、即・妊娠成功に結びつくわけではないのです。
TESEの成功は、妊娠を成功させるために必要な要素の一つに過ぎないのです。


とはいえ、必要不可欠な要素であることは間違いありません。我が家がここを順調にクリアできたのも、幸運でした。


ちなみに、術後はかなり、いや相当痛いようです。
手術後しばし横になったまま休み、お会計を済ませてクリニックを後にする際、先生は仰いました。
「麻酔が消えると痛み出しますので、なるべく早く昼食を食べて、痛み止めを飲んでください」。
そ、そりゃいかん。電車に乗る前に、恵比寿で昼食を取ってしまおう。


そう話ながら外に出ましたが、麻酔はみるみる切れていきます。
歩くという動作は、一歩ごとにたまたまを自分の足で圧迫します。
最初の交差点で、既に交差点のど真ん中で股座を押さえてうずくまりたくなった、と旦那は言います。
もうなんでもいいから、コンビニでおにぎりでも買って胃に入れて薬を飲んでしまえばよかったのかもしれません。が、それもあまりに味気ないので、駅前でチラシを配っていたインド料理屋に入りました。
痛みのあまり、立ったり座ったりする動作が地獄の拷問のようです(by旦那)。
なのにそんな時に限って、一度腰を落ち着けた後、直後に入ってきた団体客のために、席を替わってくれないかと店員がやってくる。
本音を言えば鎮痛剤が効くまではもはや一歩も動きたくなかった旦那ですが、仕方がありません。歯を食いしばって席を移動しました。
美味しかったはずのインドカレーの味も、既に全く覚えていないと言います。ひたすらあの席異動が痛かったと。


女性には分からない痛みですが。
本当に痛いようです。
でもだからといって、男性の皆さん、手術をためらったりしないでください。
男性が痛い思いをするのは、この手術の時だけなんですから。